平成8年度全国大学保健管理研究集会報告書から一部改

 

 

全国大学保健管理ネットワーク−− healthMLとUHCAN

 

長岡技術科学大学 体育・保健センター 

三宅 仁    若月 トシ

 

1.はじめに

 全国国立大学健康管理施設の有志によるコンピュータネットワーク(電子メールメーリングリスト;health ML およびWorld Wide Webによるホームページ(University Health CAre Net (UHCAN))を構築し、情報の交換に役立てている。ここではこれらの概要を紹介する。

 インターネットについては改めて述べることではないが、本来、コンピュータ技術者同士のコミュニケーション手段として発達した。現在は技術的問題がほとんど解決され、その有用性が広く認められるに及んで、多くの利用可能性が論じられ、そして実行に移されている。したがって、その応用の第一は電話やファックスに代わる新しいコミュニケーション手段である。健康管理の面では2点が特に問題となろう。ひとつはVDT障害に代表される肉体的障害であり、もうひとつはいわゆるテクノストレス症候群や過剰適応症候群などの精神的障害である。しかしながら、新しい技術はその功利面を有効に利用することこそ重要であろう。

我々、健康管理を主とするものにとっては学生(相談者、患者)およびスタッフとのコミュニケーションがもっとも身近な需要である。すなわち、学生との新しいコミュニケーション手段とすることによる健康相談・学生相談ネットワークシステムの構築と、保健管理施設勤務者のコミュニケーション手段としての電子メールネットによる間接支援システムの構築による、より重層的な方法が考えられる。すなわち、理工系の学生にとって(将来はすべての学生にとって)は日常の道具となる、これらの通信手段を利用することは、従来の面談や電話による健康相談以上に簡便なアクセスの手段となるものと考えられ、その功罪を見極めるのも健康管理者として当然の職務ともいえよう。

 

2.全国国立大学健康管理施設の有志による電子メールネット(メーリングリスト;health ML)の概要

平成7年9月、本センターにおいて行った全国保健管理施設におけるインターネットの接続状況等のアンケート調査(約90施設の回答)から約20施設(延べ24 address)の回答があったので、この全員に呼びかけてメーリングリスト(一斉送信機能を持つ電子メール。すなわち、ひとつのメールを送るだけで参加者全員に自動的に発送する機能を持つ。広報には便利。ここではHealth MLという名前を付け、そのaddressは health@melabq.nagaokaut. ac.jpである。)を構築し、平成7年11月から試験運用を行っている。平成8年11月末現在、31施設、40address となっている。これはインターネットの性格上、特に国立大学のみに制限するものでなく、すべての高等教育機関に解放されていると考えている。現に公立大学1校および私立大学2校を含んでいる。

3.内容

 healthMLで流されている情報はインターネットや電子メールなどコンピュータに関すること、自己紹介、AIDS講演会、その他研究会の案内など一般的なものに加え、稲村博先生追悼文、メンタルヘルスに関するデータベースの提案、インフルエンザ、O-157などの流行病に関する情報などであり、平成8年11月末までに178通(約1通/2日)であった。

 

4.World Wide Web Home Page : University Health CAre Net (UHCAN)

 World Wide Webによるホームページ(名前:University Health CAre Net(UHCAN、ユーキャンと読む))も試験的に構築し、平成8年1月より運用をしている(http://www.melabq.nagaokaut. ac. jp/healthml/health.html)。これには平成12月現在、9大学の保健管理センターホームページへのリンク、上記アンケートの結果、およびメーリングアドレス付きのリストなどが含まれている。

図1にUHCANのホームページを示し、図2〜図10に各大学のホームページを示す。

現在、UHCANはほとんど外部に公開されていないが、近い将来公開する予定である。その際、healthMLの掲示板機能のみならず、各大学スタッフの専門別に分類し、学生がその専門家に直接相談可能とするシステムとする予定である。

なお、一橋大学ではパソコン通信を用いた相談を以前より行っており、また広島大学ではホームページに相談窓口を開設している。これらは自校の学生を対象にしたものであるが、UHCANではすべての学生に開かれる予定である。場合によっては教職員はもちろん、広く一般国民をも対象となるであろう。

 

5.考察

 保健管理センタースタッフの新しいコミュニケーション手段としてのインターネットによる電子メールによるメーリングリストおよびWorld Wide Webによるホームページ(University Health CAre Net (UHCAN))について述べたが、もっとも重要な学生に対するコミュニケーションの問題が残る。これについてはすでに別稿1)で述べたが、パソコンの普及によりいわゆる依存症の学生も確実に増える。すでにパソコン通信などがもたらす社会的影響についての先駆的研究2)や上記一橋大学の湊3)によるパソコン通信を用いた精神治療への試みなどの報告があるが、いずれもインターネット以前の状況を前提にしている。高専と大学を結ぶ健康相談・学生相談ネットワークシステム4)なども提案されているが、現在、技術的問題から実際の運用はできていない。けれども、擬似的な運用によりその効果を確認しつつある。すなわち、長岡技術科学大学内・外においての教官との電子メールによる相談を実行している。UHCANのホームページには各大学保健管理センターのスタッフの名前とともに、それぞれの専門が記してあり、従来のようにいわゆるインハウスペーシェントのみがアクセスするのでなく、もっとも問題解決に近い専門家を患者(クライアント)が選ぶことが可能であり、マンパワーの有効利用ともなろう。今後は技術的には CU-See-Me等のテレビ電話機能などのリアルタイム通信も可能となるが、一方ではプライバシーの問題がある。すなわち、インターネットでは盗聴の恐れがあるが、これは暗号通信技術がほぼ実用化されつつあり、近い将来解決されよう。ただし、インターネットにアクセスするためには電話回線によるものでは現在のところやや困難があり、より簡便な接続方法や専用ネットワークに直接つながる通信手段の提供が望まれる。

 仮想現実感技術が実用化され、マスコミ等の喧伝により、サイバースペースと現実区別が付かない学生が見受けられる昨今、本稿で述べたシステムなどの活用により、すなわち、従来の相談室の”壁”を越えた在宅やいわゆるインターネットカフェなどからの新しいアプローチ手段を提供することは意義あることと自負している。これは、決して従来のアプローチを否定するものでなく、より相談の窓口を増やし、より緊密な問題解決の方法を提供しようとするものである。医療情報学立場から言えば、ある種の遠隔医療につながるものと考えられる。また、米国では電子メディアの精神文明に与える欠点のみならず、有効性を論じる論調5)も出現するようになっており、我々の取り組みもその一つと言えよう。

 

<謝辞>  

healthMLのメンバー諸兄ならびに、ホームページを提供して下さった各保健管理センタースタッフの皆様にお礼申し上げます。

 

<参考文献>

  1. 三宅 仁:インターネットを用いたカウンセリングの可能性について、第17回全国学生メンタルヘルス研究会報告書、49/50, 1996
  2. 川上善郎、川浦康至、池田謙一、古川良治:電子ネットワーキングの社会心理、誠信書房、東京、1993
  3. 湊 博昭:電子メールによる治療的関与の試み、第16回大学精神衛生研究会報告書、47/49、1995
  4. 三宅 仁:インターネットを用いた健康相談の可能性、Campus Health 32、23/26, 1996
  5. 佐々木 敏裕:パソコンと現代人、朝日新聞12月6日付、ミニ時評、1996

 

図は省略